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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

ことに自分は、ここに泊るつもりで来たのでもなければ、泊らねばならぬ勤務を持っているわけでもない。

そこで、いやとも言わず、応とも言わず、お角さんの頼みをなお念入りに聞こうとして草鞋を解く手を休めていると、お角さんは、いつもよりは角を立てないで、お気の毒だがねえと言って、米友に頼み込むわけというのはこうなのです。

実はお連れ申して来た、お前の知ってのあのお銀様が……また横紙破りをはじめて、わたしはどうしてもこの宿へ泊らない、これから先の関ヶ原というところまで行って、そこで今晩は泊るから――と言って、どうしても肯かない。

言い出したら引く人ではないが、そうかといって、わたしはここで皆さんをお待受けしている約束があるから、そんならと言って、お嬢様の思召しに従って、関ヶ原までのすわけにはゆかなかったのさ。仕方がないから、庄公をつけて、お嬢様のお気に召す通り、関ヶ原というところまでさきへお送り申すようにして置いたが、それでも心配でたまらない。そこで、友さん、お前さんが来たら、お気の毒だけれども、お頼みしようと思っていたところなのさ。

友さん、お前は、それ、あのお嬢様にはお気に入りなんだろう。