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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

物のすべての面目が変っていることを、お銀様は奇なりとしました。

かくて大谷の一行が街道の並木の中を上に向って行くと、ハタと行会ったところの一隊の軍勢がありました。

五七の桐の紋の旗じるし。

さんざめかした、きらびやかな一軍の中の総大将と見ゆる錦の鎧直垂――まだ年少血気の一武将であった。

「金吾中納言殿」

大谷刑部少輔の左右の者が言った。大谷はうなずいた――やがてこの両隊は行きあいばったりとなる。大谷吉隆はそれを知らざるものの如く眼をつぶって行き過ぎてしまった。

これは実に違礼であった。秀秋は高台院の猶子で、太閤の一族、福島正則ほどの大名でもこれと同席さえすることのできなかった家柄である。刑部は何故に礼を忘れた。それは顔面が崩れて、もう物を見る明を失うていたのか、そうでなければ深き物思いのために、つい礼を失したものであろう。

そうしてやり過した並木道。

刑部少輔の手の者が山蔭に形を没してしまった後、金吾中納言は、畦道に馬を休ませながら、家老にたずねた、

「あれは大谷刑部少輔ではないか」

「御意にござりまする」

「無礼千万な奴、会津征伐に加わるために東下すると聞いたが、どこへ行くのだ」