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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
ところが、この場合は、全く畜類の常識が通用しませんでした。餓えは、家畜を駆って猛獣以上のものにする。己れの生存のために、餓えを救わんとして試みかけているその瞬間を妨げられた群犬は、ここでは残らず狂犬であり、猛獣化しておりました。
相手を見つけたのです。今までの、食いよさそうな幼な児一匹では食い足りない、と思っているところへ、また一塊の肉が投げられた、いや、好んで餌食に投じて来た奴がある。「御参なれ」餓えたる犬共は、幼な児を打捨てて、新たなる相手に向って一様に牙を鳴らしかけた時は、食慾のほかに憤怒が加わっておりました。
六十三
もう竹の杖では間に合わない。
打つことは打つが、打ち殺すことはできない。その竹の杖で、犬の足を打ち折ったり、耳を叩き落したのもあり、体を突き崩したのもあるが、相手の戦闘力を全滅せしむるわけにはゆかなかったので、黒衣の覆面は、少し焦れ立ったようです。
畜生の分際で――よし、その儀ならばと、竹の杖を投げ捨てると、キラリと脇差を抜きました。
これが人間ならば、おきまりの「やあ、抜きゃがったな、しゃらくせえ、水道のお兄さんの身体へ、なまくらが立つものなら立ててみろ」