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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

であろうかと思われるくらいですから、間取りなども、宿屋というよりは陣屋、陣屋というよりは城内の大広間といったような感じのするところで、そのだだっ広い古びた一間にお銀様は、これも古風な丸行燈の下で、机に向ってしょんぼりと物を書いているところです。室内にあって、机に向って物を書きながらも、この人は覆面をとらないこと、昼の時と同じことでした。

夜はもう静かなのです。長浜は静かな町ではあるけれど、時もかなり更けている。深夜というほどではないが、夕餉はとうに終って、夜具もなかなか派手やかなのが、いつでも寝めるように展べられている。

そこで、お銀様は筆を執って、巻紙をのべて、すらすらと書き出しました。手紙を書き出しているのです――その文言を調べてみると――お銀様は行成を学んで手をよく書き、文章も格に入っているのだが、便宜上、その文言を現代的に読んで行ってみると、

「今日は、長浜の大通寺へ行ってまいりました。なるほど、お話の通り、想像以上に立派でもあり、由緒のある建築でもございました。

しかし、これだけの建築にしましては、守るものが少々認識不足に過ぎるように感じました。