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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

「どうも仕方がありません、こうなりゃあ、みんな申し上げちまいます」

と与八は、白洲にかかって白状でもさせられるように、多少苦しがって申しわけをしようとする。お婆さんはそれをなだめて、

「いや、お前さん、なにもお前さんが悪いことをしたから、咎めるんじゃありません、そんなに窮屈がらずに話してごらん」

「では話しますがね、お婆さん、こうなんですよ、わしゃ、どういうものか、あの草鞋を見ると、自分のもの、人様のものに限らず、むやみに有難くなり、勿体なくなってしまって、つい押戴いてみる気になっちまう癖なんでござんしてね」

「変った癖ですね、どうしてまた、あの草鞋なんぞが、そんなに有難く、勿体なくなるもんだかねえ、足でどしどし地面の上を踏みつけて、その上、用が済めば道端へ投げ棄てられてしまう草鞋なんぞを、どうしてまた、そんなにお前さんが有難がるんだかねえ」

「どうしてったって、お婆さん――わしゃ、草鞋様、草鞋様と蔭では拝んでいるんでございますよ。お婆さん、あの草鞋様がねえ、まだ稲の時分に、田の中においでなさる時分には、あの頭へ重たいお米の穂を載せて、長いあいだ辛抱をしていておくんなすったそのおかげで、あたしたちがお米を食べられるようになるのです。