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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

「えらいことじゃ、南部の御家老様のお嬢様をそそのかして、連れて逃げた奴がござる、その追手じゃな――それと前後してからに、南部の御城下で、お歴々の首を斬って立退いた奴があるとのことじゃ、それでお目つけがああしてお調べにおいでじゃわい」

と、向う岸から来た乗客のうちの年配なのが、土間の炉端の床几へ腰をかける匆々、こう口走ったのを、他の人数と同様、白雲も、更にその詳しい説明をここで聞いて置きたい気持になりました。

よし、事のついでだ、ここで一番、川魚でもあぶらせて、腹をこしらえてやろう。こっちもこれから前途相当に多事である。なんにしても腹をこしらえてのことだ。

白雲は、どっこいしょと腰を据え直し、持参の割籠を開きにかかりました。

十

割籠を開いて、川魚をあぶらせ、腹をこしらえながら田山白雲は、向う岸から新来の乗合客のゴシップを聞いていると、最初に齎されたところのもの以上には詳しいことを知ることはできなかったけれども、要するに、南部の家老の非常に美しいので有名なお嬢様を、そそのかして連れ出した悪い若侍がある。悪い奴だけれども美しい男で、それに腕が利いているのだということ。