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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
そう気がつくと、神尾はむっくりと起き上って、衣服の塵をはたはたとはたくと、この薪小屋から未練もなく忍び出したのですが、どちらを見ても真暗です。
暗いところをたどりたどり、表本堂の方へは出ないで、墓地の方の淋しい裏へと歩き出して見ると、この寺の墓地の区域がなかなかに広大であることを知りました。見渡す限りというのも大仰だが、広い墓地です。大小の墓石が雑然として、なんとなく安達ヶ原の一角へでも迷い込んだような気持がする。
むろん神尾は、ここがどこで――何という寺であるかは知らない。
しかし、常識で考えても、あれからの自分の足で、奥州の安達ヶ原まで走れるはずはないから、いずれ江戸府内、近郊の寺に相違あるまいが、それにしても墓地が広大だと思わざるを得ない。
いずれにしても、この墓地を突切って、垣根の破れでも壊して、往還へ出てしまえばこっちのもの。この墓地の中で怪しまれてはつまらない。幸いなことには、やっぱり暗夜で、誰も神尾を怪しむために、深夜この墓地に待構えている人はない。神尾は広い墓地の中を縦横に歩いて、その出口を求めようとしたが、ありそうでなかなかない。