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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
女の方でも必ずしも附纏う気はないのだ。また、自分としても、女に附きまとわれたり、食いつかれたりするほどの罪を作っていないのに、おたがいは、絶えず右と左から堂々巡りをし合って、ばあ――とも言えず、またかと苦笑いしながら、手を取り合っている。
手を取り合うといったところで、手に手をとって鳥が鳴く東路……というようなしゃれた道行ではないが、女は兵馬をたよるように出来、兵馬も女を見てやらなければならないように悪く出来ている。これから、名にし負う飛騨の山谷を越えて、加賀の里へ出るまで、この女との二人旅、兵馬はそれを思うとうんざりせざるを得ない。
そうこうしているうちに、日も暮れる、さし当ってはまた今夜の宿だ。
百十八
しかし、その日は、とある山宿に宿を求めることができました。
山宿といったところで、この辺は、特に宿屋を営んでいるというものはなく、頼めばどこでも泊めてくれる。
だから、特に客座敷というものもない。木地小屋が空いているからといって、そこへ泊めてくれました。
別座敷へ特に優遇の意味です。
兵馬は、女がすすめるのも聞き入れず、草鞋を取っただけの旅姿で夜を明かすべく、炉辺の柱にもたれていました。