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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

「どうしてだっていいじゃないか、今更そんな野暮を言うない、仏頂寺は、君と知った時以前から亡者なんだ、亡者として、ふらふら旅をした身の上は、君も聞いて知ってるだろう、仏頂寺弥助は加茂河原で、北村北辰斎のために斬られているのだ」

「では、小鳥峠の上で自殺したのは、ありゃ誰だ」

「誰だっていいじゃないか、亡者となってみれば、死にかわり、生きかわり、ふらふらと盲動するのが身上だ」

「では、なんにしてもなかへはいったらどうだ、焚火もよく燃えているよ」

「いや、はいるまい、はいっちゃわるいだろうな」

「これは仏頂寺君らしくもない遠慮だ、なかへ入り給え」

「止そうよ、悪いから」

「何が悪い」

「おたのしみのさまたげをしては悪いからな」

「ばかなことを言え」

と兵馬は躍起となりました。ところが、外なる仏頂寺の声はいとど平然たるもので、

「馬鹿ではないよ、そこは仏頂寺も心得ているよ」

「いやに気を廻す、仏頂寺君らしくもない言いぶりだ、かまわないから、戸を押して入ってくれ給え」

「いけないよ、ここで話そうよ、我輩は外に立っている、君はなかに居給え」

「どうも、気が知れない、この夜寒に外に立ちつくす君の気が知れない、といって、僕ばかりなかにあたたまっていて、君を外に置いて話もできないではないか、なかへ入ってくれ給え、実は都合あって、一時、君の目を避けて