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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

いたのだが、こうなってみると、聞きたいことが山ほどある、入ってくれ給え」

「いやだよ――こっちはかまわないから、君だけはそこにいて、いま言ったな、何かこの仏頂寺に聞きたいことがあると言ったが、ずいぶん知っていることは聞かせてやろう、遠慮なくたずね給え、こっちにも君には大いに話して置きたいことがあったのだ、峠で逢えずにしまったのを残念に心得ている」

百二十

宇津木兵馬は、仏頂寺弥助の柄にない遠慮ぶりが不審でたまりません。

いつもならば、案内がなくとも闖入して来る男である。

今夜はいやに遠慮しているうちに、その言う言葉つきがなんとなく冷たい。戸一枚を隔てて話をしているようだが、実は幽明を離れて応対しているような心持がしないではない。

「おい、宇津木、うまくやってるな」

と、もう一つ別な声が同じく戸の外から聞えて来ました。

「誰だい」

「わからないかえ」

「もう一ぺん――」

「わかりそうなものだね、僕だよ」

「あ、君は丸山君だな」

「そうだよ、そうだよ、仏頂寺あるところに丸山ありだ」

「君も――」

「仏頂寺と一緒に、うろついて来たよ」

「君も無事で――」

「無事であろうと、有事であろうと、そんなことはいいじゃないか」