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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
今や琵琶の湖も、伊勢の海も、米友の頭の中ではごっちゃになり、今の時も、大湊の一夜の時も、差別がつかなくなってしまいました。
だが、本来は馬鹿でないこの男は、忽ち醒めて、そうして、確と湖水の四方の陸と島とを弁別してから、以前の庵のところに立戻って来ると、弁信法師は以前のままの姿で首低れて考え込んでいましたが、やがて言いました、
「米友さん、わたくしは暫くひとりでこの島に留まりますから、あなただけお帰り下さい、帰って胆吹山の皆さんに、よろしくお伝え下さい」
百三十八
牡鹿半島の月ノ浦に碇泊している駒井甚三郎が新規創造の蒸気船「無名丸」の、檣の上の横手に無雑作に腰打ちかけて、高らかに、出鱈目の歌をうたい込んでいるのは清澄の茂太郎。
今晩は星の夜です。最初のうちは無言に星の数を数えていましたが、天文に異状なしと認めて、それから例によって出鱈目の歌にとりかかりましたのです。
ジンド・バッド・セーラ
ジンド・バッド・セーラ
ジンド・バッド・セーラ
これを、幾度か声高らかに、高いマストの横手の上で唱え出したものですから、静寂な石巻湾の天地に響き渡りました。