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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
安達ヶ原だから、広いのもやむを得ない。しかし、こうして覚えのある足に馬力をかけてさえいれば、たとえ安達ヶ原であろうと、唐天竺であろうと、怯れを見せるがものはない。ただ、今まで自分の経験に於てはじめて見る荒涼たる広っ原だと、多少の呆れをなしたもので、退倒を来たしたわけではないのです。
安達ヶ原だから広い。その広い安達ヶ原を歩かせられていると観念してみれば、いまさら広いことに呆れるというのも知恵のない話だとあきらめて、せっせと足に任せて歩いているが、太陽がようやく自分の背の方に廻ったことに気がつくと、さあ、今晩の宿だ。東海東山の旅路では、どう紛れこんでも、何かある。山神村祠か山小屋、瓜小屋の類を、どこかの隅で見つけないことはないのだが、奥州安達ヶ原とくると、ないといえば、石っころ一つない――土を掘って、穴を作って寝るか、木の上へ枝をかき集めて巣を作って眠るか。
いったい、この安達ヶ原というやつは、どこで尽きるのだ。
七兵衛は歩きながら、こういう疑問をわれと自問自答してみましたが、七兵衛の地理学上の素養が、この際、それと明答を与えてくれませんでした。