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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
四谷とんびが、指で丸い形をこしらえながら、こう言って狂い出したものですから、三人の壮士も、もう黙って聞いてはいられなくなって、南条力が、
「これこれ旅の老人――君はどなたか知らんが、近藤勇の同郷とか名乗っておられる、それでどうして、さように近藤の棚卸しをするのだ、もとより近藤だとて聖人君子ではないが、君のいうところによると、一から十まで金銭で動く無頼漢としか映っていないようだ、拙者も知っているが、近藤はそういう下品な人物ではない、彼の書いた書もある、詩もある――
百行所依孝与忠(百行の依る所は孝と忠となり)
取之無失果英雄(これを取つて失無くんば果して英雄)
英雄縦不吾曹事(英雄は縦し吾曹の事にあらずとも)
豈抱赤心願此躬(豈赤心を抱いて此の躬を願はんや)
立派なものじゃないか、志も正しいし、謙遜の奥床しさもある、書もなかなかよく書いていた、天晴れの豪傑だ。それを貴様は同郷人だと言いながら、言語道断にこき卸す、奇怪な奴だ――」
百六十六
南条力がこう言ってよたとんを睨みつけると、五十嵐甲子雄も、おさえ難い義憤を感じていたと見えて、
「いかにもいかにも、あれだけの人物を、単にただ日傭取りのお雇い壮士のようにこき卸すのは、近藤に対する侮辱のみではない、天下の豪傑に対する冒涜だ。