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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「ウヘヘ、土方隊長様」
「これは、沖田先生」
「永倉先生――」
お角以外の居合わせたものは、みな土下座をきってしまいました。
お角は、特別に、この人たちに土下座をきらなければならぬ理由を発見しません。そうかといって、人が畏れ敬うものは、相当に会釈をしなければならないと思いましたから、土下座こそきらないが、相当に畏れ敬う素振りを示して、少々出立を控えておりました。
「どうだ、年番――来ないか、あの囮をたずねて来る奴はないか、あれを取戻そうと騒ぐ気色は見えないか」
とたずねたのは、永倉新八でした。年番は恐れ入って、
「はい、どなた様も……まだ、一向」
「そうか、今日で三日になる、もう取片づけてよろしい」
「はい、畏まりました」
「このお方が、土方先生だ」
と言って、隊長を指して役々に永倉新八が紹介すると、
「ウヘヘヘヘ」
と言って、一同が拝伏してしまいました。
新撰組の隊長、鬼といわれる近藤勇が片腕、というより、骨肉というべき土方歳三が出向いて来たのだ。一同が恐れ入ったうちに、お角さんが、土方とはどんな男だか見てやりたい!
おや、思いの外いい男だねえ、色が白くて、優形で、なかなか好い男だ、新撰組というから、鬼からお釣を取るような男ばっかりだと思っていたのに、ホンに人は見かけによらないものだねえ。