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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

の浅山一伝流というには少々恥かしいでしてね、コツは習いましたけれども、やり方は未熟な自己流ですから、本場へ出て練り直さなければならない、と考えとるです」

「なるほど」

と白雲は頷きました。この青年、いよいよ存外に謙遜と自省とがある。この謙遜と自省とがある限り、まだ修行が伸びる。

というようにも感心してみたが、いやいや滅多に感心してはならない、青年や、愚者を、うっかり過分に賞めてみせると、かえって生涯を誤ることがある。

「今、林崎流の居合のそのままの型は、どこに残っているか知らん。林崎を祖として、それから出でた流派は多いが、林崎流そのままの伝統を抜くというのはあまり聞かないね」

「そうです、浅山一伝流も林崎甚助から出たのです。先生、あなたも居合をおやりになりますか」

と、今度は柳田平治がたずね方に廻ると、田山白雲が、

「到底、君のように器用なわけには行かんけれど、一通り稽古するにはしたよ、僕のはちょっと変っている、鶴見流といってね」

「鶴見流ですか……」

「あまり聞き慣れない流名だろう、だが、それを伝えた老教士の口と、腕とには、なかなか敬服すべきものがあったねえ――その流祖の鶴見というのは、年代はよく知らんが、たしか戦国時代の人であって、一つ面白い逸話を聞いている、こういう話だ、まあ聞いて置き給え」