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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

38 農奴の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,484 字 · 60 页

青空文庫

摺り抜けるのも鮮やかなものだったが、その逃げっぷりがまた一層あざやかなもので――敵も、味方も、あっ! と言って、思わず胸を透かさせたと言いつべき切れっぷりでありました。

ここまで言ってしまえば、当然このすばしっこい摺抜け者が、がんりきの百蔵という名代のやくざ野郎にほかならないことは、定連はみな感づいていないはずはないのであります。

果して、がんりきの百の野郎は、かくの如くしてこの場を走り出しました。

一方、名探偵の轟は、ひとまずは不意を食って泳がせられたものの、これをこのまま口をあいて見送っている男ではない。

かくて、白昼、意外な捕物沙汰が街道を驚かして、この事のセンセーションのために、「晒し」そのものの場は閑却されたのみならず、「晒し」見張りの役人非人までが、轟親分の捕方の方へ気を取られて、バラバラと走り出したという乱脈になりました。

九

悠々と八景めぐりをして、大津の旅籠へ戻って来た女軽業の親方お角は、戻って見ると、思いがけなくも甲州有野村の伊太夫からたよりのあったのを発見して驚きました。

伊太夫はすなわちお銀様の父である。自分はこの人からお銀様の附添ならび監督を仰せつかって来たものである。