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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

の温かい心に非常な感謝の念を持っているのです。

この感謝の心が、かくも行動となって現われて、七兵衛に対する限り、もてなしぶりが違うのです。そこで二人も七兵衛の来ることを喜ぶし、七兵衛もまた、二人以外の船の目附としては、その老巧から言っても当然その人ですから、ほとんど隔晩には船へ泊りに来て、船は、今やこの三人だけの世界のようになっているのです。

時たま、田山白雲が、船を見舞に来ることもあるが、これはウスノロにとっては最も苦手で、この人が来るとウスノロは、船室の中にすくんで扉を閉して出て来ません。兵部の娘の姿が見えると、白雲が何かとからかうものだから、娘も恥かしがって、なるべく姿を見せないようにしている。それだから船も白けて、さすがの白雲も、ここへやって来ることに気が向かない。画の資料を取寄せる際の極めて必要の場合でない限り、船へ来ることは稀れです。

駒井甚三郎も、最初のうちは、ちょくちょく来て見たけれども、これは、二人を叱りも、からかいもしないけれども、二人の方で気が置けて、やっぱり姿を見せないことにつとめているし、駒井もまた、二人の存在を無視して、仕事を片づけては行くものですから、ほとんど没交渉のようなものです。