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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
そのうちに土肥庄次郎は、長崎へ行くようになってから、二人の交りはパッタリと絶えて幾久しい間、ここでめぐり会ったというものだから、相当入魂であるべきだが、実は土肥はその後の神尾をよく知らず、神尾もまたその後の土肥のことはあんまり知らずにいて、ここへ来たものだから、再会のようで、実は生面にひとしい。
しかし、ともかく、蛇の道を心得た昔の悪友が来た日には、この帰りはただでは納まらない。土肥庄次郎と、もう一人のために、神尾は誘惑を受けて、まず広小路の松源へ引っぱり込まれ、そこで飲みはじめました。
土肥庄次郎が同行の一人というのは、ずんぐりと肥った伝法な男で、これは大師堂五郎魔であります。庄次郎と五郎魔とは、後ればせに、ちょっと来て、主人鈴木安芸守を呼び出して、ちょっと耳打ちをしたかと思うと、立ち際の一座と共に、慌しく帰りましたから、勢い神尾と門前で挨拶をし合わなければならぬ、その機会が松源への誘惑となったのですが、それを辞退する神尾でなかったのは、相手が相手だからでしょう。
松源の二階で、神尾主膳と、土肥庄次郎と、大師堂五郎魔とが、三人で飲み合いました。