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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

「わかる、わかる、では、おれは明日にもまた折返して、京都行きを承知して来るよ、いいかい?」

「御念には及びませぬ、今日からでも、おともを致します」

「よし、話はきまった」

と言って神尾主膳は、出陣の前ぶれのように勇み立ちました。

四十一

それから、神尾が突込んだ打明け話をして言うことには――

今度の京都行きの話は、どこから出たかその出所はわからない。またわかっても、それは誰にも言えないが、だいたいに於て、こういうことになっている――

相当の体面を保つだけの手当は、それはもとより充分に出る、その上に交際費はつかい放題とは言わないが、機密によってはかなり潤沢に許される、誰が今時、何のためにそんな無用な金を出して、無用な人を遊ばせるかと言えば、遊んでいながら、京都の内外の様子をすっかり偵察して、それを時に応じて、こっちへ知らせる役目だ、表面の辞令をいただかないお目附だ、悪く言えば間諜、ペロで言えばスパイというやつかも知れないが、決して下等な仕事じゃない、柳生但馬もやれば、石川丈山もやった仕事なんだ、徳川家のために、公卿と西国の大名どもの監視をしていようというのだ、その役廻りにこの神尾を見立てたのは、誰とは言えないが、見立てた奴も、見立てられた奴も、まず相当なもんだろう、そこで、話はいよいよ早い、なん