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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

「淡雪信女亡霊供養」

と、同じ手筆で、同じ筆格に認められてある。

この二つが供養塔の下に並んで、波に戯れているのは、謎とは思われない。何人か心あってしたこと、心なくてはできない手向け草、念が入り過ぎている。ことに人力ではなく、運命の悪戯というものがからまって、この波が今も二つをなぶるように、二つの魂がなぶられている。それをまた後の、いたずらの心から、さる人によって、この供養が営まれた。いずれをいずれにしても、倒逆の葛藤を免るることはできません。

だが、ここにこれがある以上――もはや、戯れの底も見えた、と兵馬は小躍りしつつ、汀の砂地を踏み締めて、人やあるとあたりを見渡すと、漁師の老人が一人、櫂を手にして、とぼとぼと歩んで来る、それをこの柱の下で待受けて問を発しました。

「その供養塔は誰が立てたのですか、何のために、何という人がこれを、いつの日ころにたてたものですかね」

「はい、それはなあ、ついこの間で、こちらから舟を乗り出して、この湖の真中のどこかで、情死を遂げた男と女がござりましてな、男の方は三十幾つかの年配、女子の方はまだ十七八でござんしょうかな、月夜の晩に、お月見だといって、浜屋の裏堀から舟を乗り出しましてな、この湖の中で、どんぶりと情死を遂げてしまいましたとかでござんす、舟だけが浮び流れ流れて、こっちの