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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

いずれにしても、不破氏は、この席へ入ると同時に、平身低頭して、出入り御贔屓の骨董屋たる腰の低いところを充分に表現いたしました。

主人側の三人の会釈を見ても、これは尊王憂国の志士の変形として受取っていない。ここまで引見の特権を与えた過分の町人としての待遇に過ぎないところを見ると、それで安心した。不破氏は大伴の黒主ではない。

「骨董屋、手順はどうだ、首尾よく進行しているか」

岩倉三位からお言葉が下ると、不破氏は、頓首膝行の形をもう一つ低くして、

「は、御意にござります、万事お申しつけ通りに、極めて内々に取計らい仕りました、今日、現品を御持参と存じましたけれども、慎重の上にも慎重と存じまして、お見本だけ、これへ持参仕りました」

「では、これへ出して見せ給え」

「はい――」

また後ろを顧みて膝行頓首をして、次の間に置据えた風呂敷を抱えて、また膝行頓首して、これを恭しく岩倉三位の前にさし置き、恐る恐る、結び目を解きにかかりました。

岩倉も、大久保も、品川も、共にその風呂敷の中を無言で見入っている。

風呂敷を解くと、中から出たものは、さのみ意外なものではありません。