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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

褌一つで木刀を一本、その真中に状箱を結いつけたのを肩にかついでいる。そのせかせかとする息の合間に、時々大声でわめいて来る。主膳とすれ違った時に、耳を澄ましてみると、

ここから江戸まで三百里、裸で道中がなるものか、なるかならぬか、やって来た、一貫占めたか、セイゴどん、しゃか、しゃか

何のことだかわからない。すれちがってしまってから、また振返ると、

ここから江戸まで三百里、裸で道中がなるものか、なるかならぬか、やってきた、一貫占めたか、セイゴどん、しゃか、しゃか

「何だい、あれは」

「薩摩飛脚でござんしょう」

ナニ、薩摩、その薩摩がどうした、憎い奴だ。

このごろ、江戸の市中の火附強盗の帳元は、皆その薩摩の為す業だと言っている。この増上寺に近いところに、その市中の山賊強盗の巣、薩摩屋敷があるはずだ、よし、ひとつ、その巣を見届けてくれよう。

神尾は、直ちに爪先を四国町の方へと向けました。なにかと面憎い薩摩屋敷へ、仕返しに行くのではない、見届けに行くのだ。

まもなく、その三田の四国町、薩州邸の表門を横目で睨んで神尾主膳――

「薯の奴め、蔓を延ばしたものだ、もとこの屋敷のこっち側は土佐の屋敷だったんだが、それを薩摩が併合しちまやがった、そうして、今やこの邸が江戸攪乱の策源地となっている、退治しなけりゃいかん、公然たる強盗の巣窟