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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

と関守氏がききますと、

「持って来るには持って来たが、置場所に困ってるんだ、お前さん、こいつを預かってくんな」

「何だよ、いったい、品物は。南京米でなけりゃ、じゃがいもか」

「そんなあ、不景気なもんじゃねえんだぜ」

と米友が、汗を拭き加減に、今そこへ取卸した至極重みのかかる袋を、伏目に見ながらの応対です。

「何だか、中身を名乗りなよ」

「当ててみな」

と、米友としては変に気を持たせるような返答ぶりでしたけれど、ワザと言うのでないことは、すぐに自問自答で底を割ってしまったことでわかるのです。

「銭だよ、こん中に、銭がいっぺえ詰ってるんだぜ」

「そいつぁ驚いた」

と、関守氏と、がんりきと、二人が思わず音を上げました。

代用食類似の不景気な品ではなく、銭とあってみると、たとえ鐚にしてからが、天下御免のお宝である。それを質の如何にかかわらず、ともかく、袋にいっぱい包んで、小柄のくせに怪力を持つこの野郎が、汗を拭き拭きかつぎ込むというその重量は大したもので、「お気の毒」(一厘銭の異名)にしてからが莫大の実価である。それを人もあろうに、銭金にはあんまり縁の遠かりそうな男が、不意にかつぎ込んで来たのですから、大黒童子が戸惑いをして来たようなものです。