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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
ことが、がんりきをおびえさせたので、つまり威光に打たれたというような気合負けなのでした。見てみると、色が黒くて頭が人並外れて大きい、そうして、その頭の結い方を見ると、武家にも町人にも見られない形。そうかといって、お公卿さんのようでもあり、還俗した出家のようでもあり、どうにもちょっと判断のつけようがない人柄ですが、その眼光の鋭いこと、人品におのずから人を圧する威力というようなものがあって、がんりきの野郎などは一睨みで、危うくケシ飛んでしまいそうなところを危なく食いとめたが、食いとめてみると、「おどかしやがんない、やい」といったような反動で、こいつにひとつ、しつこく物をたずね返してやろうという気になったところが、がんりきの意地です。そこで、
「ええ、少々ものをおたずね致したいんでございますが、この辺に中納言様のお屋敷てえのがございやしょうかねえ」
「中納言の邸、知らん」
「その中納言様には用があるわけじゃございません、中納言のお邸で、何かお慰みが行われるそうでござんすが、それをひとつ御案内を願いたいものでござんす」
と猫撫声を逞しうしたが、今度は手ごたえがありません。