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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
左に持った一掴みの中から、右手で一枚を抜き取って、その片面にしめりをくれる。
「総花にフリ撒いてやるというのに、そう遠慮するなら今度ぁ、狙撃だぞ、それその前につん出た三ぴん野郎! こっちへ向け、そうら、手前のお凸の真中へ、一つお見舞」
と言って、はっと気合をかけると、予告の通り三ぴん氏の額の真中へ、寛永通宝子がぴったりと吸い着く。
「そうら見ろ、お次ぎはこっちの三下野郎、イヤにふくれた手前の赤っ面の頬っぺたに一つ――こんにちは」
と言う言葉の終らぬ先に、なるほど、三下氏の頬っぺたに吸いついた文久通宝子、まるまっちい蝙蝠安が出来上る。
「その昔の、おいらの先祖の鎮西八郎為朝公じゃあねえが、お望みのところを打って上げるから申し出な、頭痛、目まい、立ちくらみ、齲歯の病、膏薬を貼ってもらいてえお立合は、遠慮なく申し出な、そっちの方の大たぶさの兄いが、イヤに物欲しそうな面あしておいでなさる、ドレ一丁献じやしょうか、そうら!」
空を切って飛んだのは、今度は名代の当百。以前のよりは少々重味があって、それが物欲しそうな大たぶさの耳の下をかすめて、鬢つけの中へ、ダムダム弾のようにくぐり込んだのだからたまらない。