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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

一

秋風ぞ吹く白河の関の一夜、駒井甚三郎に宛てて手紙を書いた田山白雲は、その翌日、更に北へ向っての旅に出で立ちました。

僅かに勿来の関で、遠くも来つるものかなと、感傷を逞しうした白雲が、もうこの辺へ来ると、卒業して、漂浪性がすっかり根を張ったものですから、※(「彳+低のつくり」、第3水準1-84-31)徊顧望なんぞという、娑婆ッ気も消えてしまって、むしろ勇ましく、北地へ向けてのひとり旅が成り立ちました。

得てして、人間の旅路というものはこんなものでして、ある程度のところで、ちょっと堪えられぬようにホームシックにつかまるが、これが過ぎると、またおのずからいい気というものが湧いて出て、かなりの臆病者でさえが、唐天竺の果てまでもという気分になりたがるものです。

白河城下を立ち出でたその夜は、須賀川へ泊りました。

白河から八里足らずの道。

この地に投弓という風流人があるからたずねてみよと、人に教えられたままにたずねると、快く入れて、もてなし泊めてくれました。

その翌日、例の牡丹の大木だの、亜欧堂のあとだの、芭蕉翁の旧蹟だのといったようなものを、親切に紹介されて、それから投弓のために白い袋戸へ、山桜と雉を描いて、さて出立という時、主人が若干の草鞋銭と「奥の細道」