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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

オイセとチョウセ

オイセとチョウセ

オイセとチョウセ

清澄の茂太郎が、けたたましい声を上げて突如として舟べりをゆすりはじめたのは、風景の美に打たれての感興か、それとも、美人と画家とが、自分たちだけ詩興画趣に陶酔していて、我々に頓着しないのに、いささかの嫉妬と退屈とを感じ出したのか、とにかく、茂太郎の破調が、ちょっと船の中を驚かせました。

「茂、静かにしろよ」

田山白雲は、うつろ心で叱ってみたけれども、茂太郎は頓着なく、

オイセとチョウセ

オイセとチョウセ

オイセとチョウセ

この即興と反芻とを兼ねた小天才は、この単句をどこから見つけ出したか知らないが、しきりに繰返しては小船の縁をゆすぶっている。

「茂、静かに」

白雲が叱るけれども、この場合はあまり権威がなかったのです。それは玉蕉女史との応酬唱和の興があまりに濃厚であったから、その叱る言葉も、ついつい上の空になって、相手にはこたえないらしい。

それを見兼ねて、物慣れた玉蕉女史介添の老婦人がさし出て来ました。

「坊ちゃん――おもしろい話をして上げますから、こちらへいらっしゃい」

と、茂太郎をあやなしにかかる。

「面白い話」