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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

白雲はそれを慰めかねていたが――

「よし、お松さんの実見したところによると、果して七兵衛おやじが捕まったのか、疑問を存する余地は充分ある。捕まったにしても、つかまらないにしても、その罪状というのが明瞭でないのだから、いずれ放免されるにきまっているが、世間には人違いでヒドイ目に逢う者もある、みすみす冤罪で陥れられるものもあるのだから――そう絶望するがものはない。ひとつ拙者が本当のところを突きとめてみて、いよいよ捕まったとなればかえってまた方法もある、駒井殿と相談して貰い下げることも容易いと思うから、そんなに気を落しなさるなよ」

白雲はこう言ってお松をなぐさめて、その翌日、塩釜から仙台へかけて、昨夜の捕物の顛末を聞きただし、さぐりを入れて歩いてみると、岩切というところで、一つの異聞をしっかりと聞きとめました。

ここの立場で――ほんのたった今、大変が起ったというので、火の見の下の茶屋で、土地の人が目の色を変えつつ、よってたかっているあたりの形勢の狼藉なのを見て、白雲はなんとなく胸を突くものがあるものですから、尋ねてみると、いよいよ聞き馴れない奥州語を、半ばは語勢で判じてみると、白雲が来たほとんど一刻前、ここで大活劇が行われた――というのは、松島から連れて来た重大な犯人が、ここで駕籠を破って逃げてしまったところだ