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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
争っている体を見ると、白雲は気の毒でたまりません。
白雲以外の舟を待つ人々は、事の内情も、目色、毛色も一切わからないから、どちらへどう同情していいかわからないけれども、どちらにしても、あの格闘の幕が終るまでは、われわれは舟に乗れないのだと、半ばヤケ気味に諦めつつ、なお八分の興味をもって右のロケーションを眺めておりました。
そのうちに、突きまくられ、追いまくられた船頭親子は、無残にも足を踏みすべらして、重なり合うように北上川の川の淵の中へ落ち込んでしまいました。
「アッ」
と、こちらの岸で見ていた一同が声をあげて、この無残な船頭親子のドン詰りに同情の叫びを挙げましたけれども、この不幸が、実はかえって力の弱い船頭親子には幸いでありました。というのは、力限り陸上で格闘を続けていた日には際限がない、際限がありとすれば、暴力に於て格段の差ある親子は、あの巨大な暴漢のために、徹底的に、致命的に叩き伏せられて、再び立つことができないようにまでさせられてしまうにきまっている。それが川という別管区域へ落ち込んでしまったために、相手はちょっと追窮の機会を失ったのだから、この二人の親子が水練を心得ている限り――船頭のことだから、むろんそのたしなみはあるに相違ない――また、何か水中に人を刺すような木石の類が存在していない限り、致命