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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
よって、今日貴公の来臨を機会とし、伊達公と細川家――末永く親類の名乗りを致したいものでござるが――」
練達堪能の細川三斎から、こう言われて、豪気濶達の伊達政宗が、その返答を躊躇するようなことはなかった。
「それは、深慮大計の御一言、不肖ながら我等とても同様の所存、然らば今日より、細川家と伊達家は、末永く親類づき合いをすることに致そう」
「早速の御承諾かたじけなし――然らば、その結納の記念として」
細川三斎は、伊達政宗の手から王羲之の孝経を受取って――その場で二つに裂いた。
「この上半を君に進呈し、下半は忠興頂戴し、これを以て心を一にして、両家親類和睦の記念とつかまつる」
そこで、この一巻が、伊達家と細川家と、両家にわかれての家宝となった。
それより物変り星うつり、伊達家は政宗より五代、名君と聞えた吉村の時代になり、細川家もまた当然越中守宗孝の時代となったのである。
「ところが、どちらがどう伏線になっていることでございますか、この二つに分れた王羲之が、それとは全く異なった因縁と出来事とによって、一つになる機会を得ました、それで話が伊勢の国へ飛ぶのでございます」