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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

あの当時は、造船の見学に多忙で、名所旧蹟の探訪に疎かでもあったが、今度はひとつその辺から瑞巌寺の規模を見直すかな、城としての寺の構造、要害としての地形を、明日になったらもう一ぺん見直してみよう。

こうして駒井は眠られないままに、高い天井を眺めて、うつらうつらと伊達政宗のことを考えているうちに、ふと、この寺に「御座の間」があって、そこへは政宗が、いかなる貴賓をも立入らしめなかったという由緒の一間がある。といって、「御座の間」とある以上は、何かひとたびその名を空しうせしめざるほどの期待がなければならない。ひそかに伝うるところによると伊達政宗は、いつかこの土地に天子の行幸を期待し奉る大望があって、このために、特にこの「御座の間」が設け備え奉られたのだということだ。

ありそうなことだ。

それともう一つ、この瑞巌寺の天井のいずれかに、千人の甲を伏せて音もさせない、俗に「武者隠しの間」があるそうだ。そういうことは必ずしも当てにならないが、とにかく、明朝はひとつこの寺の構造をもう一ぺん見直してみよう。絵画彫刻の類も一応――いやこれは自分には少々畑違いだ、いずれ白雲画伯を紹介してよこすことにしよう――というようなことを感じているうちに、それでも瞼がようやく重くなってくるのはやむを得ないことです。