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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
「拙者を仇と覘うものがありとすれば、それは兵馬一人じゃ。同流の門下などは拙者を憎みこそすれ、拙者に刃向うほどの大胆な奴はあるまいけれど、文之丞には肉親の弟なる兵馬というものがある以上は、子供なりとて枕を高うはされぬ」
仇を持つ身の心配を今更ここに打明けて、
「兵馬さえなくば、父に詫して故郷へ帰ることも……」
兵馬さえなくば……その言葉の下には、兵馬を探し出さば、亡き者にせんとの考えがあればこそです。
お浜はここに言わん方なき不安を感じはじめました。
文之丞を亡き者にさせたのは誰の仕業であったろう、また兵馬をも同じ人の手で同じ運命に送らねばならぬとは――お浜は戦慄しました。その時、
「吉田氏、御在宅か」
外から呼びかけた声。
「おお、その声は芹沢氏」
竜之助はくるりと起き上ります。客は新徴組の隊長芹沢鴨。
二
芹沢鴨と机竜之助とは一室で話を始めています。さほど広い家でもないから、次の間ではお浜が客をもてなす仕度の物音が聞える。お浜の方でも、二人の話し声がよく耳に入ります。
「時に吉田氏」
芹沢の声が一段低くなって、
「昨夜のざまは、ありゃ何事じゃ」