轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
「待っていろとおっしゃるのは?」
「たしかに持っていたはずの紙入が見えませぬ故」
「何だ、紙入がねえと?」
女の面をジロジロと見て、傍に敷き放してあった蓙の上に尻を乗せたのは、この宿では滅多に見かけないが桑名から参宮の道あたりへかけてはかなりに知られた黒坂という悪でしたから、茶店の老爺は気を揉んでいると、
「そいつは大変だ、紛失物をそのままにしておいたんじゃあ、この黒坂の面が立たねえ、悪くすると雲助仲間の名折れになるのだ、なあ相棒」
「うん、そうだ」
「それじゃあ、もういちばん駕籠に乗っておもれえ申して、お前様に頼まれたところからここへ来るまでの道を、もう一ぺんようく見きわめた上、宿役へお届け申すとしよう。相棒、時の災難だ、もう一肩貸してくんねえ」
「合点だ」
「ああもし、それほどのものではありませぬ、ホンの僅かばかりですから……どうも困りましたねえ」
「お前さんも困るだろうが、こっちも商売の疵になる、さあ、どうかお乗りなすっておくんなさい」
手を取って無理にも駕籠へ押し込もうとするから、女は困じ果てて、
「それでは駕丁さん、こうしましょう……」
艶々しい頭髪の中から抜き取ったのが、四寸ばかりの銀の平打の簪。