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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
竜之助はいま突いて来た竹の杖を道端に立てて歩みを止めたが――彼の姿を見れば大分変っている。
川勝の寺の堤で、賊と見誤られて財布を投げ出して行かれた、心にもなくそれに手をかけてみると、人を嚇すことの容易いのに呆れる。竜之助は、ついついそこに待ち構えて、も一人、通行の人を嚇して着物を剥ぎ取った、いま身に纏うている縞の袷がそれです。
差しているのはただ一本の刀。
笠をかぶって、右の風体で大和路を歩いて行く。誰が見ても渡り者の長脇差、そのくらいにしか見えない。
かの財布の中の金は、ここへ来るまでに大方尽きた。
人の命を取ることと、人の財布を盗ることといずれが重い――人を斬ることをなんとも思わぬ竜之助が、人の金銭をとったことに苦悶するは何故であろう。わけのわからない話であるが、竜之助は、このことを苦にする。
大和国八木の宿。
東は桜井より初瀬にいたる街道、南は岡寺、高取、吉野等への道すじ、西は高田より竹の内、当麻への街道、北は田原本より奈良郡山へ、四方十字の要路で、町の真中に札の辻がある。
竜之助は西から来て、この札の辻の前へ立った――この札の辻の傍には大きな井戸があって、四方には宿屋が軒を並べている。