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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页

青空文庫

金蔵は、今、鍛冶倉の笑い方を見てはじめて、お豊をここへ置くことが怖ろしくなったらしい。

「何だい、何を言うのだい金蔵」

どうも冥府から響いて人を取って食いそうな声だ。

「親方、お前さんはここに隠れておいでなさい、わしはこれからお豊をつれて逃げます。ナニ、命がけで逃げますよ」

「やい、金蔵、物を言うには、よく考えて言えよ」

「何だ、親方」

「この野郎、いま俺のすることをよく見ていろ」

何をするかと思えば鍛冶倉は、

「これやい、お豊、お豊坊」

鍛冶倉の背後には、さっきから女が一人、泣き伏している、その帯際を取った鍛冶倉。

馬上の武士に鉄砲で脅された七兵衛は、林へ飛び込んで木の繁みを潜って北へ逃げた。

山辺郡につづくあたりは全く人家がない、初瀬の裏山へかかっても人家がない。

人家のないことは何でもない、山道を通ることも七兵衛には何の苦もない、山でも林でも、ずんずん横切って北へ通してみたら奈良街道へ出るだろう、それを南へ直下すれば八木へ着く。

楢の小枝を折って蜘蛛の巣を打ち払いながら北を指して行ったが、行けども行けども山。

そうして七兵衛は針ヶ別所に近い或る山の上に立って、木の下蔭から日脚の具合を見て、しばらく方角を考えていました。