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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

中里介山『大菩薩峠10』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 页

青空文庫

「つきませんね、おっしゃってみて下さい」

「言ってみましょうか」

「どうぞ」

「その以前に、あなたの名を言ってみましょうか――お前さんは、江戸の両国の女軽業の太夫元、お角さんていうんでしょう」

「おや」

「驚いちゃいけません、よく知っているんですよ、裏宿の七兵衛から聞いてね」

「七兵衛さんから?」

「ええ、七兵衛につれられて行って、お前さんの小屋も見ているし、お面もよそながら拝んでいる、私は水戸の山崎、山崎譲ってたずねれば、七兵衛がよく知っていますよ」

お角がすっかりけむにまかれてしまっている時に、第二席、長講の御簾があがる。

御簾が上って、以前の南洋軒力水先生が再び現われて長講をつづけるかと思うと、そうではなく、みすぼらしい盲人が一人、三味線を抱えて、高座へ現われ、これから説教浄瑠璃の一段を語り聞かすとのことです。

そこで山崎譲は一笑して、帰ろうとしますから、お角もこれ以上、観察する必要もないと考えて、同じように席を立ちました。しかし一般のお客には、前の講釈よりも、この説教節がききものであると見えて、一人も座を立つものがありません。

お角は、山崎譲という旅人と連れ立って宿まで帰る途中、