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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

中里介山『大菩薩峠7』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 页

青空文庫

ここで武士たるものが憤り出しました。最初は相当の獲物と思って網を張ったのに、ひっかかったのが存外の雑魚だから、逃がしてやろうとした情けを仇に、あべこべに啖呵を切っておびんずる呼ばわりするのは奇怪な奴、たとい馬鹿にしてもようしゃはならないと、憤然として武士たるものは、今にも斬って捨てんず意気を見せました。そうすると米友は提灯を下へ置いて、足場を見計らい、例の杖槍を取って、半身に構えたものです。

「武士たるものの魂がそれほど大事ならば、大道中へころがしておくがものはなかろう、樟脳の五斗八升もふりかけて、七重の箱の奥へ八重の鍵でもかけて蔵っておいたらどうだ」

「よくも拙者をおびんずるにたとえたな」

武士たるものも容赦のならぬ顔色です。

武士たるものは、今にも斬らんず構えをして、槍を構えた米友の形を篤と見たままで、まだ刀を抜き放たないのは、かなりのくせ者であります。

下段に身をしずめている米友。風雲甚だ急なる時、武士たるものが、存外急き込まないで、

「ははあ、こいつは奇妙だ」

といいました。

さて、米友にもまたわからなくなりました。宇治山田の米友は、槍を使うことにおいては天成の自信を持っているはず、天成の自信に、淡路流の極意を加えて、格法を無視して、おのずから格法の堂に入っていることが、心得ある人を驚かすのを例とする