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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
中里介山『大菩薩峠7』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 页
「承知致した」
そこで駕籠屋は急いで垂をハネ上げると、駕籠の中から一刀を提げて出て来たのは、羽織袴の身分あるらしい覆面のさむらいでありました。
「どうか、こちらの方へひとつお隠れなすっていていただきます」
駕籠屋が案内した木立の中。駕籠屋どもはなにくわぬ面をして、ワザと悠々と空駕籠を荷って通り過ごすこと半町ほどのところで、期待した通りに、バッタリとであったのは予想の通り、供を一人つれた八州見廻りの役人であります。
「駕籠屋」
「はいはい」
「その駕籠は空であろうな」
「はい、仰せの通り空でございます、摺差まで参りましての戻りでございます」
と言って駕籠屋どもは申しわけをする。それで許されるであろうことを予期して、唯々としてやり過ごそうとすると、
「それは幸いのことじゃ、摺差までやってくれ」
「エ?」
駕籠屋二人が呆気に取られました。
「摺差までやれ」
「はい」
八州の役人は、その駕籠へ近寄って、手ずから垂を揚げたものですから、駕籠屋どもは、もう二の句がつげません。お断わりを申すにも申すべき術もなければ、理由を見出す余裕などがあろうはずはありません。相手が泣く児もだまるはずの八州のお役人ときているのですから――