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おおさかのかのうせい
大阪の可能性
織田 作之助
「新生」1947(昭和22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,468 字 · 15 页
気づいたことだけ言うことにする。
宇野浩二氏の作品でたしか「長い恋仲」という比較的長い初期の短篇は、大阪の男が自分の恋物語を大阪弁で語っている形式によっており、地の文も会話もすべて大阪弁である。谷崎潤一郎氏の「卍」もやはり、大阪の女が自分の恋物語を大阪弁で語っている形式である。この二つの大阪弁の一人称小説を比較してみると、語り手が一方は男であり、他方は女であるという相違だけではなく、まるで同じ土地の言葉とは思えぬくらい違っているのだ。「卍」はいつもの饒舌癖がかえって大阪の有閑マダムがややこしく入り組んだ男女関係のいきさつを判らせようとして、こまごまだらだらと喋っているという効果を出しているし、大阪弁も女専の国文科を卒業した生粋の大阪の娘を二人まで助手に雇って、書いたものだけに、実に念入りに大阪弁の特徴を生かそうとしているし、ことに大阪の女の言葉の音楽的なリズムの美しさはかなり生かされていて、この作品を全部大阪弁で書こうとした作者の意図は成功している。しかしこの小説の大阪弁は紋切型の大阪弁ではないまでも、何か標準型の大阪弁というような気がする。普通大阪の人たちが使っている大阪弁はもっと形のくずれたものであって、このような標準型の大阪弁で喋っている人は殆んどいない。