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おおさかをあるく

大阪を歩く

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《大阪を歩く(おおさかをあるく)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,964 字 · 65 页

青空文庫

悪いことでは無い。ただ、私にとっては、そうして持って戻った肴を、煮ても、焼いても、決して、うまかった、ためしがなく、そんな物より、製菓の方がいいと、思われるだけである。

だが、京都の人よりも、倹約的ではない。京都の、さるお茶屋の女主人と、牛肉を食べに行ったが、その鍋の残りを

「届けとくれやすな」

と、云ったのには、感じ入った。もう一つ、感に打たれた事は、そうして、何うしても判らなかった事は、私と、芸者と、仲居とが、大阪から、高台寺の貸席へ行った時の事である。私の、食い残しの飯を、

「勿体な」

と、云って、その仲居が食べた。その仲居が私に惚れていた訳では無いし、私も惚れている訳でもないし、そうして櫃の中には未だ御飯が残っているのである。こうなると、宗教であり、信仰であって、理屈の外になってくる。

私の母親が――それは、勿論、貧乏のせいであったが、残った、腐りかかった飯を、いつも、湯で洗っては、屋根の上で、陽に干していた、干飯を作るのである。雀が食ったり、乾燥しきらずに、赤くなって腐ったり、干す五分の一位の分量しか、干飯に成らなかったが、実に、根気よく小さい窓から身体を延して、飯を干していた。