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てんま
天馬
金 史良
「文芸春秋」1940(昭和15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,407 字 · 70 页
中には大枚をばらまきに来た金山男もいる。いよいよ目的地へ来たぞと玄竜は考えた。たとえ田中が大村に案内されていないとしても、誰かに連れられてきっとこの界隈へ朝鮮色を満喫するために来ているに違いなかった。成るべくは大村君と一緒でないようにと……彼はこう念願しつつ一つ一つ飲み場へ首を突き入れて調べてみることにした。その後をやはり子供達はにやにや笑いながらついて来る。彼はたとえ自分を尊敬する人がいてどんなに引張ろうとも決して道草は食うまいと固く決心した。それ故カフェー鐘路会館の扉を開けるや誰かがよう玄さんと叫んだ時も、彼はへへへと笑ったまま踵を返し、バー新羅の中を窓を開けて覗いたとき、おい気違い、乞食野郎! と皆から罵声を浴びせられた時も、彼はただ自分が柔道初段以上もあることを思い起すだけでへらへらと笑い去った。或るところはうっかり飛び込んで、朝鮮服に洋装とりどりの女からお花頂戴頂戴と襲われたが、それでも彼は女共のお尻一つ叩かず花を二つ三つ投げてやりながらほうほうの態で逃げ出しただけであるが、このようにその界隈を西から東へと殆んど虱潰しに捜し廻ったけれど、どうしても田中の一行は見当らない。