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「ダブックウ」ひょうりゅうき

「太平洋漏水孔」漂流記

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,264 字 · 37 页

青空文庫

考えると、それでは行きっきりになってしまう。渦が逆流でもしないかぎり……永遠の竜宮ゆきだよ」

「………」

私は、さっきから折竹が頻繁につかう、竜宮という言葉が気になって堪らない。こいつ、何かどえらいものをきっと隠しているなと、問おうとしたのを折竹が遮って、

「それから、もう一つ『太平洋漏水孔』探険の大障害というのが、さっきも云ったひじょうな高湿度だ。なにしろ『太平洋漏水孔』の形がちょうど漏斗だからね。海面の蒸発に※(「さんずい+(冢-冖)」、第3水準1-86-80)留がおこる。その探険隊が、『海の潮吹き穴』とそこを名づけたように、濛気赤道太陽をさえぎる大湿熱海だ。

ところで、そのニューギニア会社の探険のとき、実験がおこなわれた。それは、大蚪虫をいれた箱を『太平洋漏水孔』へ流したのだが、その、空気温度が約摂氏四十五度。ところが、それから十分ばかり経って引きよせてみると、その大蚪虫の体温が空気温度とおなじだ。君、人間が四十五度の体温にどれくらい堪えられるだろうか」

「想像もつかんよ、地球の熱極というのがあれば、『太平洋漏水孔』のことだろう」

「ふむ、ところでだ。