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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田 作之助

「海風」1940(昭和15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页

青空文庫

そういう飲み方も、しかし、蝶子にはまた一つの心配で、いずれはどちらへ廻っても心配は尽きなかった。大酒を飲めば馬鹿に陽気になるが、チビチビやる時は元来吃りのせいか無口の柳吉が一層無口になって、客のない時など、椅子に腰掛けてぽかんと何か考えごとしているらしい容子を見ると、やはり、梅田の家のこと考えてるのと違うやろか、そう思って気が気でなかった。

案の定、妹の婚礼に出席を撥ねつけられたとて柳吉は気を腐らせ、二百円ほど持ち出して出掛けたまま、三日帰って来なかった。ちょうど花見時で、おまけに日曜、祭日と紋日が続いて店を休むわけに行かず、てん手古舞いしながら二日商売をしたものの、蝶子はもう慾など出している気にもなれず、おまけに忙しいのと心配とで体が言うことを利かず、三日目はとうとう店を閉めた。その夜更く、帰って来た。耳を澄ましていると、「今ごろは半七さんが、どこにどうしてござろうぞ。いまさら帰らぬことながら、わしというものないならば、半兵衛様もお通に免じ、子までなしたる三勝どのを、疾くにも呼び入れさしゃんしたら、半七さんの身持も直り、ご勘当もあるまいに……」