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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

02 左京の恋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,902 字 · 22 页

青空文庫

「では、六郷様、確とお渡し申しました」

多与里を送ってきた老女が、厳重らしいお辞儀をして引揚げた後に、腰元の多与里はやるせない姿で取残されました。

大名屋敷で、臣下に美しい腰元を貸す――そんなことはあり得ない筈というかも知れませんが、何を隠そう、これは極めて当然のことで、石川日向守には、こうしなければならぬ事情があったのです。

というのは、大名の本妻は徳川幕府の人質政策で、悉く江戸屋敷に置くことになっておりますが、石川日向守の江戸屋敷にいる御内室というのは、先代の大守、主殿頭総安の息女で、日向守総和は婿養子であった関係から、小糠三合ほどの遠慮があり、その上御内室は、余り容貌の良からぬ関係から、羽目を外さぬ程度であったにしても、古文真宝な嫉妬が深酷で、日向守も三人侍女などに脂下っているわけに行かなかったのです。

一番年嵩の十九で、一番美しい多与里は、まずいの一番に六郷左京のモデルとして、日向守の側から遠ざけられました。

高島田が初々しく、紫矢絣、立やの字の帯、白粉が濃くて、小さい唇が玉虫色に光るのも、楷書で書いてルビを振った美しさです。

「――――」