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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

01 第四の場合

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,195 字 · 22 页

青空文庫

「では――」

狭い通路を通って、明るい壇上に起った磯上伴作は、全く驚くべき風采でした。今時分には珍らしい紋付の羽織袴、それも幾年女の手にかからないか、見当もつかないようにヨレヨレになったのが、虫喰い頭、皺だらけの額、半白の※(「髟/(冂<はみ出た横棒二本)」、第4水準2-93-20)、冷笑と苦渋な表情に歪み果てた頬、――そんなものを鎧って、風に吹かれる案山子のように、安定を欠いた身体が、壇の上に、フラフラして居るのです。

唯二つの瞳だけが、明らかに青春の光を湛えて、二台の灯のように、キラキラと光ります。

「私は事実の神聖のために申上げます、――これは永久に、地球の最後の日まで秘密にすべきものでしたが、今となってはいたし方がありません。

倉繁氏とやらは、喜田川志津子と千束守の手紙と日記から、二人は明らかに情死したことを読んだと言われました。その証拠なるものは滅茶滅茶に鋏を入れ、縦横に塗抹した日記と手紙ですぞ。喜田川三郎が果して、そんな細工をしたものなら、自分の名誉を救うために、反ってどんな人が読んでも、その日記と手紙から、志津子夫人と千束守の情死したということが判らないように鋏を入れ墨で抹消すべき筈ではありませんか。