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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

野村胡堂『奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 页

青空文庫

七

平次はこの酔態へ釣り気味に訊ねました。

「まさにその通り、ありゃ女房の虎の子にしていた、お袋の形見だよ。何べん口説いても、あればかりは質に入れさせなかった品で」

「どうしてそれをお前は知らないなんて言ったんだ」

「面倒臭かったんですよ、親分。掛り合いで引張り出されると酒の味が悪くなるからね、――が、もう酒もたくさん、言うだけのことをみんな言ってしまえば、あっしも気が軽くなるというもので。御免よ、親分方。あっしはちょいと横になるぜ」

辰五郎はコロリと横になると、女房の死骸の前に、大きなイビキのレクイエムを上げるのでした。

七

「ワッ、驚いたの驚かねえの」

八五郎は鉄砲玉のように飛んで来て、平次と鉢合せをしそうになって、クルリと廻って羽目板を力にようやく立直りました。

「何を大騒動するんだ。まるで四谷の伊賀町の路地へウワバミでも出たようじゃないか」

平次はそれを迎えてニヤリニヤリしております。後ろにキョトンとしているのは、何が何やら見当のつかない弁慶の小助の偉大な肉塊。

「いきなり引っこ抜いて、ピカリと来ましたぜ。あの用人の竹林というのは、年寄りのくせに恐ろしく気が早い」