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おんなのけっとう

女の決闘

太宰 治

「月刊文章」1940(昭和15)年1~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,661 字 · 75 页

青空文庫

――わが愛の君に。私は讃美歌をさえ忘れてしまいました。いいえ、そういう謎のつもりでは無かったのです。あなたから、何もお伺いしようと思いません。そんなに気を廻さないで下さい。どうも、私も、きょうはなんだか、いやになりました。もう、止しにしましょうか。

――そうお願いできれば、……

――ふん。あなたを罰する法律が無いので、いやになったのですよ。お帰りなさい。

――ありがとう存じます。

――あ、ちょっと。一つだけ、お伺いします。奥さんが殺されて、女学生が勝った場合は、どうなりますか?

――どうもこうもなりません。そいつは残った弾丸で、私をも撃ち殺したでしょう。

――ご存じですね。奥さんは、すると、あなたの命の恩人ということになりますね。

――女房は、可愛げの無い女です。好んで犠牲になったのです。エゴイストです。

――もう一つお伺いします。あなたは、どちらの死を望みましたか? あなたは、隠れて見ていましたね。旅行していたというのは嘘ですね。あの前夜も、女学生の下宿に訪ねて行きましたね。あなたは、どちらの死を望んでいたのですか? 奥さんでしょうね。

――いいえ、私は、(と芸術家は威厳のある声で言いました。