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じょゆうのおや

女優の親

岸田 国士

「芸術新潮 第四巻第九号」1953(昭和28)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,203 字 · 7 页

青空文庫

まだ/\堅気でない商売の部類にはいつているようだ。これがいけないのだ。客商売とか、水商売、人気商売というような観念が、いまでも芝居の世界の一つの常識になつている。それに対して僕の子供などは多少反撥しているようだ。これからの役者は、謙虚な態度で勉強するということとは別に、自ら恃むところがなければならぬ。だから、卑屈になることを極度にきらいながら、様々に自分の美質を伸ばし、俳優として、立派な成長をして来た人は新劇の畑に既に少くないのである。

初めに『夜の向日葵』の舞台を楽しく観たと書いたが、しかし、のん気な気持ちでいたわけではない。三島君の芝居だからとか、子供が出ているからということではない。私はだいたい芝居をのん気な気持ちで観たことがない。文学座の場合とは限らず、客席から舞台を観ていて、自分を忘れるというような経験がない。時によると、僕は芝居が嫌いなのじやないかと思うことがある。芝居を観て楽しめない僕が、どういうわけで脚本を書くのか――と、僕に近い仲間たちは思つているのではないだろうか。僕が芝居を書くのは不思議だ。僕の芝居に対する愛情が一体どこにあるのか、それがつかめないという人もある。