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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
そこで存八は顔をこわばらせて、
「へえ、ワタシはそんな名じゃありませんので」
と刑務所からの紹介状を差出した。そこにはちゃんと石毛存八という姓名が明記されているはずだからだ。しかし常サンは存八のこわばった顔なぞには全然トンチャクなく、
「そんなものは見なくてもいいや。二三日前に刑務所からハガキもきてるんだ。明日から働いてもらう。今日は奥へ行って休め」
「へえ、それがそうはいかねえので」
「むやみにそうはいかねえ野郎じゃないか。うるせえ奴だな」
「それがね。この手紙にも書いてあるはずなんで。たのんで書いてもらったんですよ。飯場はよくないと書いてある。小さいながらも小屋の一ツも持たせていただきたいとね。馬小屋の破れたのでも、納屋の傾いたのでも結構で。そのつもりで世帯道具を買ってきたんですよ。村の人にたのんで世話して下さいな」
「飯場はイヤか」
「どうも性にあわないね。これから真人間にならなくちゃアいけねえ」
飯場に住むとここでもコソとよばれるにきまっている。これが不愉快だ。しかし、何よりも存八にはお作という目当があった。
服役中の存八はここの応急の土木工事にかりだされて二ヶ月ほど働いたことがあった。