轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんなけんし

女剣士

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页

青空文庫

かの雑兵は、そこに雑兵の魂が宿っていたわけではなかったのである。雑兵の魂は彼自身の心中に巣くっていた。かの雑兵を一刀のもとに葬っても、雑兵の魂は生きていた。つまり、なにもならなかったのだ。そして歌子を恋うる思いの切なさに、改めて仰天せざるを得なかったのである。

松ヤニをぬったかの傷口は小用のたびに難渋しなければならなかったが、難渋しているうちはまだしもよかったのだ。なぜならその難儀を天の声ときき、苦痛のゆえに、わずかに慰めることもできたからである。

傷口が治ってしまうと、まるで牢舎から脱けでた悪漢のように悪心をたくましくするばかりで、天の声もとどかなくなってしまった。剣をもつ手もそぞろである。雨につけ、風につけ、恋する心の厳しさを味わうばかりで、苦行の厳しさは身につかない。

かくてはならじと悲願を立てたのが石切りであった。南無摩利支天この石を切らせたまえ、邪心を払いたまえ、と木刀をけずりながらも呪文を唱えつづける。呪文を唱えながらもウカウカすると幻のトリコになっているのである。

しかし、朝之助、よくがんばった。この悲願果さぬうちは里へは降りぬとがんばったものである。